備前市にある日本遺産に認定された特別史跡「旧閑谷学校」に行って来ました。紅葉の名所としても知られる場所です。
場所は山陽自動車道の和気ICから車で約5分、電車の場合は山陽本線吉永駅からバスで約12分ほどの所にあります。途中で道を間違えてないか不安になるくらい人里離れた山の中にあります。
駐車場
県道261号線から看板の案内に従って閑谷学校方面に向かいます。小さな橋を渡ってすぐの川沿いに駐車場がありますが、混雑してない時期であればそのまま奥の閑谷学校前の駐車場まで行って停めた方が近くて便利です。駐車無料。
車を降りて学校方面へ。途中で「旧閑谷学校」にゆかりのある人物たちを紹介した掲示板があります。この旧閑谷学校は1666年に岡山藩主池田光政が庶民の教育のために家臣の津田永忠に命じて作らせた学校との事。
案内板の屋根の苔が凄いです。
旧閑谷学校案内図
こちらは校内の案内図。
泮池(はんち)にかかる石橋を渡って受付に向かいます。奥に見える大きな建物が講堂。
鶴鳴門(かくめいもん)
正面に見えるのは鶴鳴門(かくめいもん)と呼ばれる校門です。右手は梅林となっています。
鶴鳴門から中を覗き込んだところ。2本の大きな木が見えます。
入り口はこちらではなく、鶴鳴門を右に行った所。入り口周辺にはちょっとしたお土産や食べ物などを販売している小さな売店があります。
入場
受付で入場料(大人400円、小中学生100円)を払って校内へ。左手に講堂が見え、その前にはだだっ広い空間が広がっています。
石塀(せきへい)
学校を取り囲む塀は、角がなく丸みを帯びた特徴的なかまぼこ型。どんな利点があるのか分かりませんが、すごく独特です。
閑谷神社(しずたにじんじゃ)
入り口正面に見えるのは「閑谷神社(しずたにじんじゃ)」。創始者・池田光政を祀った神社ですが、残念ながら本殿は保存修理工事中でした。
聖廟(せいびょう)/階(かい)の木
閑谷神社の隣は儒学の祖、孔子を祀った「聖廟(せいびょう)」。そこへ続く石段の両側の木は中国・山東省の孔子の墓所「孔林(こうりん)」から持ち帰った種子から育てられた「階(かい)の木」です。
階の木
閑谷学校が紅葉の名所として紹介されるときは、たいていはこの2本の階の木の紅葉が紹介されるのですが、訪れた12月初めはすでに葉が全て落ちて寒々しい感じになってしまっていました。樹の下には大量の落ち葉。
この階の木の紅葉の見ごろは11月10日頃のようで、その時期には毎年ライトアップもしているそうです。
聖廟
2本の渡り廊下の先に孔子像が安置された大成殿。孔子像は八角形の聖龕(せいがん)というものに納めらているため普段は見ることが出来ません。孔子を祀る祭典「釈菜(せきさい)」など年に数回の特別な日のみ公開されているようです。
渡り廊下は亀甲柄でいいデザイン。中には入れず外側から見るだけです。
大成殿の裏の山の斜面の上の方にも石塀が見られます。こんな山の中に塀なんか必要なのかと思ってしまいますが、動物除けの意味合いもあるのかもしれません。
聖廟の門から鶴鳴門を見たところ。
上皇御手植の木
改元に伴い、きっとすぐに掲示を変更したんでしょうね。
講堂
聖廟の階段を下りてすぐ隣が講堂で、学校建築物としては唯一の国宝に指定されています。
側面に並んだ火灯窓が印象的です。
小斎(しょうさい)
講堂の手前の小さな建物は小斎(しょうさい)と呼ばれ、藩主が学校を訪れた際に使用する休憩所。意外と質素です。
講堂
講堂は内部には入れず、周りを取り囲む縁側というか廊下のみ靴を脱いで上がることが出来ます。
裏側も通れてぐるっと一周できるようになっています。
火灯窓からのぞく講堂内は太い柱が並んでいます。ここでは儒教の四書(「大学」「中庸」「論語」「孟子」)の講義が行われていました。
講義の時は柱が邪魔そうとか、不良が柱にもたれて教師に怒られてそうとか、どうでもいいことをつい想像してしまいます。
床はピカピカに磨かれていて、鏡のように反射しています。光と陰でいい感じ。
習芸斎(しゅうげいさい)
講堂からつながるその奥の建物の一室は「習芸斎」。あまり広くないスペースですが、儒教の五経(「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」)の講義が行われていた場所。近くに住む農民たちも出席していたそうです。
傍らに積まれた藁の座布団。
見上げれば立派な梁です。
飲室(いんしつ)
その隣の部屋は教師や生徒の休憩室「飲室(いんしつ)」。今風に言えばカフェテリアでしょうか。
中央の炉には「火の扱いに注意」的な事が彫られています。
飲室の玄関。
外から見たところ。左から飲室、習芸斎の玄関、右側の建物が小斎です。
この閑谷学校内の建物の屋根に使われているのは赤い「備前焼瓦」。一つ一つが微妙に色が違ってモザイク状になっていてお洒落です。
文庫(ぶんこ)
少し離れた所に建つのは書物が納められた「文庫」。純和風の蔵なのですが、お洒落な屋根瓦のせいで、洋風の建物に見えなくもない。
飲室門(いんしつもん)
文庫のすぐ近くにあるのは飲室門(いんしつもん)。日通いの生徒たちが出入りする通用門です。
火除山(ひよけやま)
飲室門の奥の学舎や学房につながる通路。左は石塀ですが、右は人工で造られた「火除山(ひよけやま)」と呼ばれる山。学房などからの出火が講堂に及ばないようにするために造られたそうですが、かなりの規模。絶対に燃やさないという強い意志が感じられます。
しかし、そのためにこの通路は人が二人並んだだけで一杯になってしまう狭さになってしまっています。せっかくのだだっ広い場所なのに、と思うのですが、これも防火の方が大事という事なのでしょう。
通路の途中にある水路。
通路を抜けると謎の石のオブジェ。
振り返った所。
校厨門
この辺りは山の際に近いところのせいか、まだまだ紅葉が見られてきれいです。
湿気もあるのか石塀には苔が生えていました。この石塀の外側は遊歩道となっていて、トンネルを通って臨時の駐車場へとつながっています。そちら側から歩いて来るのも良さそうです。
石塀沿いをそのまま奥の突き当りまで行った場所は紅葉真っ盛り。
赤や黄色に色づいて見事です。足元も紅葉のじゅうたん。
とりあえず写真を撮りまくってしまいます。
資料館
ここは元々は学房や宿舎があった場所ですが、明治時代に木造校舎が建てられて閑谷中学校として使用されていました。現在は資料館となっています。
こちらが入り口。靴を脱いで館内を見て回れます。
よく見ると玄関の石段も角が取られて丸みを帯びています。かまぼこ型の石塀といい、この辺りの住民は角々したものが嫌いなのでしょうか?それとも角を見つけるとアールをつけずにはいられない性分なのかも。
館内2階部分に閑谷学校に関連する様々な資料が展示されています。資料の撮影は禁止。
閑谷学校の歴史や当時の様子、足利学校などの各地の学校や関連する人物、中国の孔子廟などが幅広く紹介されています。入ってすぐに模型、その奥に展示と、どの部屋もなんとなく展示方法が似ているので、段々とデジャヴュ感に襲われますが、興味関心のある人は満足できる充実した内容となっています。
資料だけじゃなく、建物自体も渋いです。個人的には階の木が植えられた当時のヒョロヒョロの写真が印象的でした。こんな頼りなかった木があんなに立派に育ったのかと、月日が経過することの重みを何か学問の話と絡めて、上手いこと言いたくなる衝動にかられました。
旧閑谷学校
住所:岡山県備前市閑谷784
開門時間:9:00~17:00
休館日:12/29-31
入場料:大人400円/小中学生100円
駐車場有