高梁市成羽町の日本遺産にも認定された「吹屋ふるさと村」を散策してきました。
「吹屋」は、江戸時代中頃から銅山の町、そして幕末から明治時代にかけてはベンガラの町として栄えた場所。石州瓦とベンガラ色の外観の建物が並び、「赤い町並み」として知られています。1977年に国の「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)」に選定されています。
場所は備中高梁駅から北西に車で40分ほど。曲がりくねった山道を延々と走ってたどり着いた標高約500mの高原に、赤い町並みが突如現れます。
東西に延びる通りの東側から散策スタート。
観光案内所「下町ふらっと」
さっそく現れたのは観光案内所。周辺の散策マップなどが入手できます。地区内で唯一の平屋建て。
内装は電車のデザインなどで知られる岡山出身のデザイナー水戸岡鋭治によるものだそうです。
柔らかな良い色合いのストールが並んでいますが、これは特産品「ベンガラ」を使って染色したもの。ここではベンガラを使った染色体験も出来ます。
こちらがベンガラ液。弁柄(べんがら)は鉱石から得られる酸化第二鉄を主成分とする赤色顔料で、焼物や漆器などの工芸品や神社仏閣などの建造物などに使われてきた高級品だそうです。
建物の向かいでは、乾燥のために干された染色後の布地が風に揺れていました。いい光景です。
金子や(金子屋)
ホーローの看板があちこちに貼りつけられたカフェ。ベンガラカレーというのがあります。
明治末期の建物で、元は刀鍛冶が住んでいたそう。
入り口付近にも色々とディスプレイされています。この日は休業。
道の向かい側にはかつて鍛冶小屋がありましたが、現在はテーブルが並んだ憩いのスペースになっています。
一角にはなぜかバス停の標識と傘が2本。なんとなく「となりのトトロ」を思い出してしまいます。
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ちょっとした農園みたいな場所があり、何やら栽培されています。
よく見ると赤い唐辛子でした。
林家
手前に見えるのは江戸末期の建物で、蹄鉄工場だったという林家。このあたりはまだ建物がまばらに建つだけです。
吹屋ふるさと村 下町駐車場
ここを左手に降りた所が駐車場。かなりの高低差があります。結構なスペースがあるのでよほどのことがない限り、車が停められないことはないかと思います。
ちなみにこの吹屋ふるさと村へのアクセス方法は何通りもありますが、選択を間違えるととんでもなく狭く細い山道を通らなければいけない場合もあるので注意が必要です。
カーナビ頼りではなく、Googleストリートビューなどで道の状況も確認しておいた方が良いかもしれません。「ラフォーレ吹屋」のサイトが丁寧に紹介しているので参考になります。
観光案内版。駐車場はここだけではなく、西側にもあります。
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さらに通りを先に進むと、ようやく町並みらしくなってきました。確かに赤い町並みです。右手前のコンクリート塀ですら赤色。
彩紅(さいこう)(松浦家)
ベンガラ染めの暖簾が渋い美容室。最近オープンしたとのことですが、こんな山の中でやっていけるのだろうかと勝手に心配してしまいます。ちなみにここは、以前も美容院だったそうで60年続いたそうです。
城井田家
こちらもホーロー看板が掲げられています。明治中期の建築。
引き戸には「反魂丹黒丸子」等の看板も。かつては精米、製粉業を営んでいたという事ですが、その当時取り扱っていたのでしょうか。
那須家
玄関に置かれた石臼たちは何に使われていたのでしょうか。江戸末期の建物で、昭和初期からは旅館を営んでいたそうです。
ゲストハウスElven Village(イレブンビレッジ)吹屋
奥まった場所に2つの大きな蔵が並んでいます。これも赤みのある土壁。
現在は改装して「イレブンビレッジ吹屋」というゲストハウスになっているそうです。
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川本家
その手前の建物は江戸末期の建築。小間物屋をしていたそうで、裏の蔵はその倉庫だったのかもしれません。2階左側のわずかなスペースに施されたなまこ壁がおしゃれです。
建ち並ぶ家の屋根に段差があり、緩やかな登り坂になっていることが分かります。
黄金荘
手書きの看板といい暖簾といい、渋さが漂う玄関。江戸末期の建築で、現在はコスプレ撮影時の更衣室として貸し出されています。
建物右側では1906年創刊の雑誌「婦人世界」のバックナンバーや、古い人形などがディスプレイされていました。
ギャラリーみのや
見学自由のギャラリー。中にはオルガンがあって誰でも弾くことができます。
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通り沿いに東西に並んだ建物の間にぽっかりと空いたスペースは、南側にある天開道大神宮への参道でした。
その隣のお宅はピンク色の塀が見事。
一角ではめだかが無人販売されていました。
吹屋観光協会 案内所
ふるさと村のちょうど中ほどにある観光案内書。ガイドマップなどが入手できます。表には集団検診や資源ごみの回収場所などの案内がベタベタと掲示されていて、ちょっと面白い。
診療所と市の出先機関である連絡所を兼ねているようで、その多くはコロナ関連の注意を促す掲示なので致し方ないとは思うのですが、観光地として周囲の景観の美化に努めようとする民間の動きをよそに、そんな事よりも伝えるべき事をしっかりと伝えていく、という公的機関の強い意志を感じます。
案内所の軒先のプランターには唐辛子。
これは「紅辛(べんがら)唐辛子プロジェクト」という町全体で唐辛子を育てる取り組みだそうです。赤い町だし、唐辛子は魔除け厄除けになるとも云い伝えられているので今のご時世にはピッタリで、良い取り組みですね。
吹屋名物「紅だるま」「紅てんぐ」もありますし。
案内所内では、吹屋で撮影された映画「八つ墓村(1977)」の当時の写真が展示されており、出演していた渥美清や萩原健一の姿を見ることができます。監督の野村芳太郎やその他のキャスト陣のサインもありました。
なお実際にロケが行われた場所は、ここからは少し離れた「広兼邸」と下谷地区の「大塚墓」だそうです。
大きな壁かけの世界時計もありました。必要もないのに金持ちの家に掛かっているイメージ。
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建物隣にあった通路から通りを撮ってみました。やはり赤いです。もはや赤が標準で普通すぎて、色の感覚がおかしくなってきます。
その2に続きます。